新木は団地に一人で戻った。ひたすら雨の中を逃げたこと以外道中の細部は憶えていない。お誕生会を終えて友達が帰った後の舞がびしょ濡れの新木を驚いて迎えた。新木は舞と言葉を交わさずにポケットに入っていた濡れた物を全てテーブルに出して、えりの部屋に閉じこもった。 テーブルにはえりから預かっている財布とカード、団地の鍵、新木の免許証とそのケースの濡れ具合が雨に濡れた時間の長さを物語っていた。舞は心配してバスタオルを新木に届けた。えりが新木の行方が分からなくなったので病院から舞に電話をしてきた。新木がびしょ濡れになって戻っているということを訊き、えりは病院での殺人事件と関係があるのではと考えたが良く分からないことを想像しても仕方がないと思い直した。兎に角、新木が無事だったのでそれで十分だった。
報道用のヘリコプター3機台が上空を旋回している。病院内で大掛かりな現場検証が始まっていた。テレビ局の報道陣が大挙して押しかけて入り口を取り巻いている。奥でワイドショーの取材陣が立入り禁止の場所に入り込んで警官に追い出されて騒ぎになっていた。三多摩丘陵総合病院は一躍全国的に有名になった。二人も死んで、その上子分が親分を殺してしまったのだから。次のショッキングな事件が起こるまでしばらくは芸能ニュースで毎朝取り上げられるだろう。
ごった返す報道陣を縫って、健太はえりに見送られて病院からタクシーで戻った。
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