長い船旅は小樽港に早朝の四時過ぎに着いて終わった。二人とも早めに起きてきて、到着前にデッキでラジオ体操をした。勿論新木も付き合わされた。昨日よりは旨く体操が出来たと感じた。その後、新木は葬儀が終わって以来剃っていなかった無精ひげを剃った。舞にかわいいとまた冷やかされた。 どうせならと小樽の市場の中で食事をした。三人ともうにいくら丼を頼んだがボリューム満点で流石に舞と健太は食べきれず残した。新木はもったいないので残した分を代わりに食べた。新木に年代はまだ関西人の「もったいない」という感覚が残っていた。母親が小さい子の残したものを食べているのを見た時によく食べられるなぁと感じた。新木には残飯を食べる感覚があった。今朝はもったいないという感情の方が勝り自然に二人の残飯を食べることが出来た。新木はまだ舞と健太を「愛してんねん」という風には自覚して気付いていなかった。
小樽から札樽自動車道で札幌まで行き、道央自動車に乗り継いで滝川で降りて国道38号線で富良野に向かった。叔父夫婦の家は富良野と旭川との間に位置していた。途中で電話したら三時まで集会があるのが分かったので、新木は少し観光をする気になっていた。
新木は冷泉華子に電話した。山岸のニュースが知りたかったからだ。あの日華子は帰省から団地に戻っていて、救急車の音は聞いたがスクラップ置き場に関する新聞やテレビの報道は無かったという。新木は詳しく説明はしたくなかったので華子に礼を述べて電話をきった。
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